今回はゲーム関連銘柄を取り上げていきたいと思います。
大手コンシューマゲームのパブリッシャー6銘柄を分析して今後の株価を占っていきます。
ゲーム関連銘柄 (3月15日時点)
ゲーム以外の事業も展開している銘柄も多いため、ゲームの売上が直接的に株価に反映されているとは限りませんが、ゲーム事業が売上の大半を占めている銘柄が多いです。
また、人気シリーズの新作が発売されると、販売本数が伸びて、その年度の売上に大きく貢献している傾向にあります。
日本のゲームコンテンツへの海外での人気も高く、オイルマネーの流入も話題になっています。
銘柄コード | 7974 | 9697 | 9684 | 3635 | 9766 | 6460 |
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銘柄名 | 任天堂 | カプコン | スクエニHD | コーエーテクモHD | コナミグループ | セガサミーHD |
株価 | 8,286円 | 6,144円 | 6,289円 | 1,807.5円 | 10,260円 | 1,904円 |
決算期 | 3月 | 3月 | 3月 | 3月 | 3月 | 3月 |
上場 | 東証P | 東証P | 東証P | 東証P | 東証P | 東証P |
業種 | その他製品 | 情報・通信 | 情報・通信 | 情報・通信 | 情報・通信 | 機械 |
配当 | 189円 | 65円 | 97円 | 50円 | 124円 | 47円 |
利回り | 2.30% | 1.06% | 1.54% | 2.77% | 1.21% | 2.47% |
PER | 21.58 | 29.88 | 17.54 | 15.86 | 25.75 | 13.71 |
PBR | 3.91 | 7.05 | 2.36 | 3.8 | 3.46 | 1.18 |
賃借倍率 (3/8) | 3.07倍 | 3.45倍 | 1.02倍 | 3.57倍 | 0.26倍 | 27.72倍 |
オイルマネー | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
25年 業績 | 反落 | 連続最高益 | 増益続く | 上向く | 高水準 | 小幅増益 |
株価予想 | 〇 | 〇 | 〇 | ◎ | △ | ◎ |
ゲーム関連株の2024年動向と株価の動き
7974 任天堂
ゲーム機ハード、ソフトで総合首位。海外シェアも高い、いわずと知れた日本を代表するゲームパブリッシャーです。
- 「マリオ」新作アニメ映画が26年4月に公開予定
- 「ニンテンドースイッチ」後継機が25年3月に発売(?)
- 「スーパーマリオブラザーズワンダー」は12月末で1070万本突破
- USJに「ドンキーコング」テーマの新エリアが今春オープン
- ゼルダ実写映画化
任天堂株は値嵩株でしたが、株式分割でだいぶ手が出やすくなりましたね
「スイッチ2」は思惑で買い、事実で売る・・・
今後の株価は
2024年2月6日に発表された3Qでは、2024年の通期の営業利益が1.1%増の5,100億円に上方修正されました。それまでの予想は5,000億円の0.9%減益予想だったこともあり、サプライズとなりました。要因としては、発売8年目の「ニンテンドースイッチ」が堅調で、円安効果もあったとされています。スイッチについては、前年比で減少傾向にありますが7年目のハードとして息が長いです。任天堂は海外への販売も大きいので、円安は業績に追い風になっています。
株価指標は、PER、PBRともに割安というわけではありませんが、先日の決算では増配が発表されて、年間189円の配当額になっています。配当利回り率は2%を超えているので、ゲーム関連株の中では比較的高配当です。円安が続き、業績的にも好調が続くようでしたら、日本の代表的なゲーム企業として海外投資家からの根強い買い支えも期待できます。
また、株価は決算後に上場来高値を更新して9,000円をつけています。2022年10月1日に10分の1の株式分割が行われているので、それほど高値の印象はありませんが、分割前の値で90,000円です。株式分割がなければ、100株投資でも900万円の投資額が必要となっていたので、中堅の個人投資家の方の参加が増えて株高につながったと考えると、大成功の株価施策になったといえます。
さらに、2024年の任天堂の株価に大きく影響しそうなのが、次世代ゲーム機の発売時期です。Nintendo Switch後継モデルとされる、「スイッチ2」が巷で話題になっています。当初は2024年3月に発表され、今年の年末商戦での発売が予想されていました。その発売時期が2025年の第1四半期(2025年1月~3月)に遅れそうだと有力メディアが報じられると、任天堂株が一時8%も下落しました。それだけ、「スイッチ2」の発表への期待が高いということでもあります。
株価は思惑で上がり、事実で売られるという格言があります。業績はもちろん大事ですが、「スイッチ2」などの思惑に注目です。
チャート
発売タイトル(24年)
新作の売れ行きは株価に影響する可能性があるので要チェックです。
- アナザーコード リコレクション:2つの記憶 / 記憶の扉 (2024/1/19発売予定)
- マリオvs.ドンキーコング (2024/2/16発売予定)
- プリンセスピーチ Showtime! (2024/3/22発売予定)
- ルイージマンション2 HD (2024年夏発売予定)
- ペーパーマリオRPG (2024年発売予定)
- Metroid Prime 4 (仮称) (未定)
9697 カプコン
家庭用ゲームソフト開発王手。「ストリートファイター」シリーズなどのアクション系軸に人気作品を多数もつ大阪本社のゲームパブリッシャー企業。
- モンハンハウ1000万DL突破
- 新卒初任給引き上げ(23万5000円⇒30万円)
- 期末配当の増配(27円⇒38円)
- 株式分割の実施(24年3月末を基準日に1対2)
業績は最高益更新で絶好調ですね
ファンダメンタルズが少し気になるかも・・・
今後の株価展開
2024年3月期の業績は過去最高益を達成の見込みで絶好調です。今月発表された、3Qの経常利益は494億60百万円で前年同期比で47.4%増です。上期に『ストリートファイター6』の発売で約300万本の売り上げ、『バイオハザードRE:4』は無料タイトルアップデートなどで、累計648万本を売り上げています。また、人気タイトルのモンスターハンターの位置情報ゲーム『モンスターハンターナウ』昨年9月に配信開始されて、10月に1,000万ダウンロード達成しています。人気IPを多く抱えているカプコンのゲーム事業は波に乗っています。
一方でファンダメンタルズは、他のゲーム会社と比べても割高の水準にあります。PER、PBRも若干高いので、ファンダメンタルズ重視の方にとっては手が出にくい株価水準だと思います。ただ、賃借倍率は3倍程度ですし、チャートも今年に入ってからは調整を挟みながら順調に上げてきています。逆にPERやPBRが高いのは、この水準の株価でも買いたいと思う投資家の方が多いからともいえます。カプコンは特に海外の販売比率が高く、ストリートファイター6は米国で「The Game Awards 2023」を受賞しているほどです。オイルマネーの保有比率も高いので、海外投資家の方の買い支えもありそうなので、ファンダメンタルズに関係なく、株価が上昇していく可能性も十分にあります。
さらに、3月7日に、株主還元拡充策が発表されて大幅に株価が上昇しました。期末配当が27円から38円の増配となり、年間配当が65円になります。また、3月末に1対2の株式分割が実施されます。これは、現在の5,936円で3月末を迎えたとすると、4月1日には2,968円の株価になるということを意味します。現在カプコン株を保有している投資家の方の持株数も半分になりますので、価値は変わりません。一瞬、それを聞いて驚かれる方もいらっしゃる方もいると思いますが心配無用です。100株買うのに必要な資金が半分になるので、買いやすくなり、株式分割後は株価が上がりやすいと言われることが多いです(もちろん、すべての銘柄が上がるとは限りませんので、引き続きファンダメンタルズやチャート分析は欠かさず行いましょう)。
チャート
発売タイトル(24年)
2024年は3月に『ドラゴンズドグマ2』が完全新作として発売されます。12年ぶりとなる王道ファンタジーで、シリーズ累計販売本数790万本(2023年9月30日時点)を売り上げています。今回、どこまで販売本数を伸ばせるかが、カプコンの2024年度の業績と株価の鍵となりそうです。
- 逆転裁判456 王泥喜セレクション(2024/1/25発売)
- ドラゴンズドグマ2 (2024/3/22発売予定)
- モンスターハンターストーリーズ (2024年夏発売予定)
- モンスターハンターワイルズ (2025年発売予定)
9684 スクエア・エニックスHD
エニックスとスクウェアが合併した会社で、言わずと知れた王道RPG『ドラクエ』『FF』シリーズを手掛ける大手パブリッシャーです。ゲームのデジタルエンタテインメント事業以外にも出版事業なども展開しています。ゲームセンターや玩具メーカーのタイトーも傘下にいます。
FFとドラクエの発売・・・
ファンダメンタルズはどれも標準的ですね
今後の株価展開
2024年3月期の業績は、3Qまでは市場コンセンサスを上回る水準できています。スマホゲームは新作投入したものの既存作が低迷していて、上振れの期待はできませんが、FF7のリメイク『FF7リバース』がPS5で今月発売されますし、『FF14』の拡張パッケージやオンラインRPG『ドラクエ10』などの新作が発売がされているため、2025年3月期は営業利益の改善が期待できそうです。
ファンダメンタルズについては割高でも割安でもない妥当な水準にあるとみています。PERとPBRは日経の平均よりは少し高いですが、大手パブリッシャー企業の中では標準です。ただ、株価については、今年に入って急ピッチで上昇してきているため、ここから上の水準にいくには、新作の話題性や売れ行きが鍵を握るといえるでしょう。
チャート
発売タイトル(24年)
大ヒット作『ファイナルファンタジー7』のリメイク版がPS5で2月29日に発売されました。他にも春から夏にかけて、新作や追加パッケージが続々発売予定です。
- ファイナルファンタジー7リバース (2024/2/29発売予定)
- ドラゴンクエスト10:追加パッケージ (2024/3/21発売予定)
- サガ エメラルド ビヨンド (2024/4/25発売)
- ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー (2024年夏発売予定)
3635 コーエーテクモHD
コーエーとテクモが2009年に経営統合してできたゲームパブリッシャーです。オンラインゲーム含めた海外への展開にも力を入れています。
- サウジアラビアのファンド(PIF)がコーエーテクモ保有比率引き上げ
- 株式会社アカツキ(3932)と業務提携
『レスレリ』すごく売れていますね
毎月オイルマネーが入ってますね・・・
今後の株価展開
業績面では2024年3月期の3Qは『レスレリ』が300万ダウンロードを突破するほどの好調で、オンライン・モバイル分野では四半期売上が過去最高になっています。一方で、自社パブリッシングの新作スマホゲームの販売手数料、広告宣伝費、及び外注加工費の増加等により、営業利益は減益となっています。
PERとPBRは標準的な水準といえますが、配当利回り率は他の大手パブリッシャーと比べて、最も高いです。
2025年3月期の業績は新作が複数発売を控えていることもあり、反発が期待できます。株価も昨年の8月頃から年末まで下落トレンドが続いていましたが、底打ち反転し今年に入って上昇相場に入ってきています。昨年の上期は2,200円から2,500円前後のボックス相場でしたので、その水準までは戻してくる可能性はあります。
また、昨年末からサウジアラビアの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がコーエーテクモHD株を買い増してきています。前回の保有比率5.56%(934万株)から8.97%(3,013万株)まで、2,079万株も増えています。今後さらにオイルマネーが入る可能性があるので、その動向に注目です。
チャート
発売タイトル(24年)
- Wo Long: Fallen Dynasty Complete Edition (2024/2/7発売予定)
- 三國志8 Remake (2024/2/29発売予定)
- Winning Post 10 2024 (2024/3/28発売予定)
- Rise of the Ronin (2024/3/22発売)
9766 コナミグループ
家庭・携帯用ゲームが主力事業です。スポーツ施設の運営は業界首位です。カジノ機はアメリカとオーストラリアに展開し、パチスロ機は国内で販売しています。
- アニメ制作スタジオ設立
- 大谷翔平選手が「パワプロ」「プロスピ」のアンバサダーに就任
パリオリンピック銘柄なんですね
割高の値嵩株なので手を出しにくいです・・・
今後の株価展開
業績面は好調です。2024年3月期の3Q決算は、主力タイトルの収益が計画を上回って、上方修正されています。特にデジタルエンタテインメント事業は「桃太郎電鉄ワールド ~地球は希望でまわってる!~」が累計出荷本数100万本を突破しています。
一方でファンダメンタルズ的には、PER、PBRはやや割高の水準にあります。配当利回りも特段高いとはいえません。これは株価が上昇してきたためで、今年にはじめは7,000円付近にあった株価が、2カ月で3,000円近く上げて、一時期10,000円を突破するほど上げてきました。ここにきて日経平均とともに調整に入っていますが、チャートは依然として強いので、わたしはいずれまた10,000円を回復してくると見ています。信用売残が信用買残を上回る”売り長銘柄”でもあるので、下げたタイミングで買い戻しも見込まれます。
2月19日にはモルガン・スタンレーMUFG証券のコナミGのレーティングがオーバーウエートからイコールウエート、9400円→10000円にランクアップされています。証券会社のレーティングは実際の株価とかけ離れていることも多いのですが、今後のトレンドを占う参考にはできます。
また、コナミグループに関しては、オリンピック銘柄でもあります。サッカーゲームの「ウイニングイレブン」を開発していたり、大手スポーツクラブ事業をもっています。今年7月にパリオリンピックが開催されるので、開催が近づくとともに株価も動意付く可能性が十分にあります。
チャート
発売タイトル(24年)
- ときめきメモリアル Girl’s Side 1st ~3rd 2024年2月
- 魂斗羅 オペレーション ガルガ 2024年初頭
- ORE’N 2024年
- CYGNI: All Guns Blazing 2024年
- 幻想水滸伝 I&II HDリマスター 門の紋章戦争 / デュナン統一戦争 未定
- シャインポスト Be Your アイドル! 未定
- METAL GEAR SOLID Δ:SNAKE EATER 未定
- SILENT HILL 2 未定
- SILENT HILL: Townfall 未定
- SILENT HILL f 未定
6460 セガサミーHD
ゲームソフト大手のセガとパチスロ遊技機大手のサミーが2004年に経営統合されてできた会社です。
- カジノ向けSaaSやオンラインゲーミング事業のGAN社を買収予定
- 「ペルソナ」と「龍が如く8」販売数が1週間で100万本突破
- アミューズメント機器事業をセガトイズに吸収
今年発売の「ペルソナ」と「龍が如く」が人気ですね
ファンダメンタルズで買うなら断然ココですね
今後の株価展開
2024年3月期の3Q決算では増収増益となりましたが、通期では当初の予想より下回る(下方修正)と発表されています。パチスロ遊技機の販売台数は好調ですが、ゲームのコンシューマ分野での新作、「ソニックスーパースターズ」、「ENDLESS Dungeon」、「Total War:PHARAOH」の販売が伸び悩んだことが要因のようです。一方で、コンシューマソフトの「ペルソナ」と「龍が如く8」の新作は1週間で各々100万本を突破するなど好調ですので、2025年3月期のスタートは期待できそうです。
ファンダメンタルズはゲーム業界の中では割安です。配当利回り2.5%程度ありますし、PBRは1倍付近で推移しています。
昨年の夏ごろには、3,000円をつけていましたが、チャートは下降トレンドできていました。2月の3Q決算で一気に急落して、1,700円台をつけましたが、底を打った感があります。今回取り上げているゲーム関連銘柄の中では、今買うならわたしはセガサミーHDを選びます。信用買残が増えているのも、今が底値だと思っている個人投資家の方が多いからだと思います。
信用買残が多いことの心配な点として、機関投資家の空売りに狙われやすいことがありますが、少なくとも空売りは2023年11月以降は入っていません。機関投資家も今から売りに入る旨味を感じられないのでしょう。
テクニカル分析
- 『龍が如く8』(2024/1/26発売)
- 『ペルソナ3 リロード』(2024/2/2発売)
- 『ユニコーンオーバーロード』(2024/3/8発売)
オイルマネーが日本のゲーム株に流れている?
ここのところオイルマネーが日本株を買っているという話をよく聞きます。
具体的に日本のゲーム関連株を物色しているオイルマネーはサウジアラビアの政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)です。昨年12月から2月にかけて3度、コーエーテクモ株を買いまして保有比率を増やしているというニュースがありました。コーエーテクモはまだまだ安値圏にいますので、今後さらに買いまして保有比率を増やしてくる可能性もあるので、押し目は拾っていきたいところです。
また、このPIFは他にも任天堂、カプコン、ネクソン、東映を保有しており、日本のゲームコンテンツやアニメ産業に関心があるとされていますので、今後のオイルマネーの流入先に注目です。
あくまでも筆者の独断と偏見に基づいた予想です。株の売買は自己責任でお願いいたします。
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